2026年10月

『はずれ者が進化をつくる』 稲垣栄洋/著 ちくまプリマー新書 筑摩書房

  著者は『雑草はなぜそこに生えているのか』『身近な雑草の愉快な生きかた』
などの著作がある雑草の研究者。雑草生き方に共感して人間生活の生き方も説く。
文章は平易で中学生くらいから読める。

 6600万年前の大絶滅期に大型の恐竜は絶滅したが、小さな鳥類の一部とほ乳類
は生き残った。また、海中では、アンモナイトに追いやられ海底に棲んでいたオ
ームガイは生き残った。いずれも「はずれもの」が生き残り進化を続けてきた。
このような生物の生き方を人生にもあてはめて、いろいろな生き方論もこの本で
は語っている。人生についていろいろ思い悩むことも多い青年期の生徒にも大い
に参考になるのではないか。

 まず、植物界の「多様性」と人生の「個性」と重ねて語る。自然界は「遺伝的
多様性」と言って「バラバラの世界」、生き物は本来バラバラと著者は言う。
「自然界には正解がありません。」とも言う。さらに「それまで経験したことが
ないような環境の変化に直面したとき、その環境に適応したのは、平均値から大
きく離れたはずれ者でした。」

と、はずれ者が新たな環境へと適応してきたと語る。さらに「進化をつくりだし
てきた者は、常に追いやられ、迫害されて弱者であり、敗者でした。」などとも。

 古代の海でも激しい生存競争が繰り広げられてきた。「戦いに敗れた敗者は淡
水という逆境をのりこえて淡水魚へと進化し、ついに陸上へと進出し両生類が生
まれてきた」とも、興味ある話が続く。最後に「雑草はさまざまな知恵と工夫で
厳しい環境を生き抜いています。」と雑草の価値を語って終わっている。人生に
通じる話がつぎつぎと出てくる。           2020年6月   900円

 

『ヤブガラシ』 野坂勇作/さく 「かがくのとも」6月 福音館書店

 「ヤブガラシ」読んで字のごとく「藪もからす」というとてもやっかいな植物
である。何度刈り込んでもまた生えてくる生命力の強い野草である。その生命力
はどこから来ているのかよくわかる絵本である。

 場面は団地のとある公園。ツゲの木の植え込みがある。公園では定期的にツゲ
の植え込みの剪定が行われている。ツゲの茂みの上に出たこの植物の芽も根本も
きれいに刈り取られる。何日かして、男の子は植え込みの下を除くと・・下にあ
る刈り取られたはずの草の茎から芽が出ていることを発見。日が経つと、この草
はどんどん伸びてきて、ついに植え込みの上にも出てきた。この植物はついに葉
っぱを出しつるも伸ばし始めた。つるはくるんくるんは巻きながら植え込みにか
らみ出した。この様子が見開きで順序良く描かれている。ついにこの植物はツゲ
の木の植え込みの上を覆った。やがて夏を迎える頃、ますますこの覆った野草は
広がって、ついに隣にあるモチノ木にまで巻き込む勢い。ついに、モチノ木全体
におおいつくした。これだけ覆われると植え込みのツゲの木やモチノ木は太陽の
光が届かなくなり生育も弱ってくる。これは困ったことになった。

 あたりを見回すと、この植物は電柱にも、あたりのフェンスにもいっぱいから
んでいる。(実際にはこれほど絡む前に刈り取られているのだが。)この植物はヤ
ブガラシである。続いてヤブガラシの成長の様子が順序良く描かれている。夏に
なるとヤブガラシはやがて花をつけチョウたちを呼び込む。本当はヤブガラシは
いろんな虫たちの命をつないでいることになる。また剪定が行われてもヤブガラ
シは
芽を出してく。その秘密は・・?

じつはヤブガラシは地下の根が連なって生きている宿根草だった。
地下の根がしっかりしているので、土の上はいくら刈られても平気な植物である。

                         2026年06月   440円
            
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